うまい根深ねぎ(白ねぎ)の代名詞として知られる「深谷ねぎ」。
何度となく産地に通う中で、そのディープな魅力が浮き彫りとなってきました。
「テロワールによる多様性」です。
それは、「深谷ねぎ」が、
深谷市付近で生産されたネギの総称、であるがための魅力であり、
深谷が日本一のねぎ産地である理由でもあります。
中山道を境に異なるテロワール
テロワールとは、ワインの世界でよく使われる言葉ですが、
味わいに影響を与える土や気候風土のことを意味します。
深谷ねぎの広大な産地は、
中山道(国道17号)を境に、テロワールの異なる2つに分けることができます。
新戒(しんがい)、八基(やつもと)、明戸(あけど)、中瀬(なかぜ)などの北部、
(なぜか北部は読み方が難しい地名が多い。。。)
そして、岡部、藤沢などの南部です。
土質、気候の異なる地域で、それぞれの良さを生かしたネギづくりをしています。
どんな特徴があるのか、それぞれ見ていきましょう。
北部=「秋冬ねぎ」産地
今頃から3月頃までメインの産地となるのが、北部です。
利根川の氾濫によってもたらされた沖積土壌は、
適度な保水性もあり、肥沃で、ねぎ作りに適した土。
さらに、利根川を越えることでちょっと湿気を帯びた冷たい赤城おろし(風)が、
甘くてうまい「深谷ねぎ」を育みます。
南部=「春ねぎ」「夏ねぎ」産地
一方、南部は、春や夏がメインの産地。
栽培が始まってまだ20年ほどしかたっていないエリアです。
火山灰土で、水はけがいい土質を生かし、暑さにも負けず、ねぎを育てています。
南部での夏ねぎ栽培が始まったことで深谷は一年中ねぎを出荷することができるようになり、
日本一の収穫量を誇る産地になったのだそうです。
生産者さんから伺って感動したのは、若い世代を中心に
南部・北部それぞれが互いの良さをリスペクトしあうことで日本一の産地が形成されている
のだということでした。
品種による多様性
深谷ねぎには、さらに
葉がやわらかい、甘みがある、色ツヤがよい、など様々な特徴をもった品種があります。
最近では、品種名を表記して選べるようにしている直売所もあり、
好みの品種を選ぶ「深谷ねぎ通」が増えてきているよう。
ねぎ料理を知り尽くした深谷のイタリアン「パンチャ・ピエーナ」の栗原シェフが、
代表的な品種の特徴について分析してくれました。

(栗原シェフは写真真ん中、右はNHK「うまいッ!」にも出演された、深谷ねぎの匠・高橋さん)
●「龍ひかり」「龍翔」など龍系
白と緑のコントラストが美しい。硬めで、キュッとしまっているので切りやすい。
→大き目に切って鍋料理や、焼き鳥に。
●「ホワイトスター」「ホワイトタイガー」などホワイト系
やわらかく、生食向き。
→白髪ネギに。(水にさらさなくてもOK)
●「春扇」「夏扇」などの扇系
龍系とホワイト系の中間的な存在で扱いやすい。
●農研2号
元祖「深谷ねぎ」とも言える、古くからある在来品種。緑の葉までやわらかで薫りもいい。
火を通すと甘いが、生だとかなり辛い。葉が折れやすく育てにくいので生産者はほとんどいない。
→雑炊やポタージュに
「深谷ねぎまつり」で体感できる!
実に奥深く、多様な「深谷ねぎ」。
人間と同じようにネギにだって多様性があってもいいじゃないか。
新たな視点を私に教えてくれました。
今月末29日に開催される「深谷ねぎまつり」では、
実際に品種を選んで、名物「深谷カルソッツ」が楽しめるので、
ぜひ違いを体感してみてくださいね。
(昨年の「深谷ねぎまつり」レポートはこちらから。あわせてご参照ください。)

(2016年「深谷ねぎまつり」)