2017/ 2/17(金)

「東京うど」の幻想的な世界&農家直伝の食べ方

お店には山菜なども並び始め、春の訪れを感じますね。

この時期、無性に食べたくなる春の味覚といえば、

さわやかな薫りと独特の食感がたまらない「うど」!

東京うど

中でも、すらっと長く、白さ際立つ「東京うど」は東京が誇る特産野菜です。

その美しさの秘訣は、栽培方法にありました。

めったに入れない生産現場に伺ってきましたので、その様子をお届けします。

(産地取材 2015年2月)

真っ暗な穴蔵で育つ 真っ白な「東京うど」

生産現場をご紹介する前にまず、うどのおさらいから。

うどは数少ない日本原産の野菜のひとつで、英名も「udo」。

平安時代の書物に記載があり、江戸時代には栽培が始まっていたとされています。

東京では、関東ローム層の粘土質が、地中深く穴を掘るのに適していたことから、

「うど室(むろ)」と呼ばれる穴蔵の中で栽培するようになりました。

穴蔵

この穴の中を降りた先に「東京うど」の畑が広がっているのです!

「うど室」で育つ「東京うど」は

光に当たらないため、白く、繊維が優しく、アクが少ないのが特徴です。

栽培は1年がかり!

「東京うど」栽培の要になる「うど室」ですが、

そこで白い茎が芽吹き、うどが育つ期間は全体のごく一部。

実は、前年の春から栽培が始まっています。

うどは種ではなく、株(根株と呼びます。)から育つ作物。

根株が、たくさんのうどを芽生えさせる栄養を蓄えることができるよう、

地上でまず根株を育てる必要があるのです。

 

4月頃、畑に植えられた根株は、大地と太陽の恵みを吸収して芽を出し、

茎を伸ばし、可憐な花も咲かせます。

霜が降りると、茎は枯れてしまうまですが、

その頃には根株が栄養を十分にため込んで準備万端の状態に。

いよいよ地下の「うど室」に運び、植えるのです。(「伏せ込む」と言います。)

伏せ込まれてから約1ヶ月。

真っ暗な中で、根株の栄養と水だけで「東京うど」は育ち、

長さ約80㎝まで伸びたところで、やっと収穫の時を迎えます。

「東京うど」が織りなす神秘の空間へ

それでは、いよいよ「うど室」の中に参りましょう!

見学させてくださったのは小平市で17代続く「にごりや農園」小野さんです。

小野さんご夫妻

なるべく「うど室」に光や冷たい風が入らないようにするため、

生産者であっても開け閉めは最低限にしているほど。(光に当たると、緑色になってしまいます。)

リスクがあるにも関わらず、中に入れていただけたこと感謝しながらの取材となりました。

 

この、ひと一人分の小さな正方形の穴が、「うど室」への入り口です。

うど室へ

深さは約3m。

先代が100年以上前に掘られたという歴史ある空間を降りていくと、温かな空気を感じました。

「うど室」の中は、うど栽培に適した15~20度に保たれているのです。

しっとりした土とうどの香りも感じながら降りきると、

広がっていたのが「東京うど」が織りなす幻想的な世界!

うどの神秘的な姿

地上とつながる縦穴を中心に東西南北に横穴が広がり、

それぞれに所狭しと「東京うど」がにょきにょき育っていました。

真っ暗な中、電球に照らされて、浮き上がる真っ白な姿は、なんとも神秘的!
ですが、横穴の奥行は3mもあるにも関わらず高さは、しゃがんでいなければいけない程度しかない、

まさに穴蔵なので、長時間の作業をするのは重労働。

また、地上で室の開け閉めや荷物の受け取りなどをしてくれる人が必要で、

決して一人ではできない仕事なのだそうです。

 

そういった大変さもあってか近年、生産者は減り、

で生産組合に属しているのは約60件、小平市ではわずか3件だけに。

今や、本当に貴重な、東京が誇る伝統野菜なのです。

「東京うど」の美味しくて意外な楽しみ方

「うど室」を見学させていただいた後、どの料理にも「東京うど」を使用しているという

うど尽くしのおもてなしをいただきました。

うどづくし

うどと春菊のサラダ、炒め物、ベーコン巻、煮物に加え、

なんと海苔巻き、お稲荷さんの具材もうどが主役!

とりわけ新たな感動があったのは、うどを薬味としての活用すること。

野菜たっぷりけんちん汁の上にたっぷりトッピングされているのがそうです。

薬味づかい

白髪ネギのように細く切って、添えていただくと、

生ならではのみずみずしさと薫りが広がり、爽快!

いつもの汁ものやお料理にプラスするだけで一気に春らしいお料理になります。

ネギや夏場のミョウガのような感覚で、春の薬味の定番として取り入れたいと思いました。

うどはデザートに!?

なんと、デザートにまで、うどが使われていました!

コンポート

1cm角にカットしたうどを、

はちみつとレモン果汁でコンポートにしたものだそう。

香りはマイルドになり、シャキシャキ感だけがしっかり残っているので、

言われなかったら独特の風味のある果物だと思ってしまうほど。

 部位別使い分けのコツ

最後に、調理のポイントを。

小野さん曰く、新鮮な「東京うど」ならアクがほとんどないので皮をむく必要がないのだそう。

 

でも、「山うど」の名で流通しているような日光に当たって

ほんのり色づいているうどはやはり、厚めに皮をむいていただく方がいいと思います。

 

皮は、ぜひキンピラにしていただいてくださいね。

油をまとうとアクや表面の産毛は気にならなくなります。

 

内側の部分は、生で酢味噌和えやサラダにしたり、先にお伝えした薬味に。

もちろん煮たり焼いたりしても。

 

私は豚肉で、千切りにしたうどを巻いて焼き、照り焼き風でいただくのがお気に入りです。

そこに黒七味をかけたら、もう言うことなし!

 

うどは鮮度が大切な野菜なので、早めに食べていただきたいのですが、

すぐに食べきれない場合、さっと茹でておくと保存もききます。

まさに葉物野菜の保存のコツと一緒ですね。

 

ぜひ、幻想的な世界に想いをはせながら、

この時期ならではの東京の味、楽しんでくださいね。

 

【生産者さんデータ】にごりや農園 

小平市小川町1-185

http://www9.plala.or.jp/nigoriya/index.html 

にごりや農園では、直売所で「東京うど」をはじめとする野菜を販売している他、

うどの収穫体験など、イベントも開催しています。