先日、東京タワーの麓に
1日だけ現れた特別なリストランテ「醞醸亭UNJOTEI」に
お招きいただき、青森の食力を体感してきました。
テーマは「保存」と「醗酵」。
冬の間、雪に閉ざされる青森が長年かけて育んできた食の知恵です。
私は「何もない」も価値になると考えていて、
昨年の3月に山形県上山市と「春を待つかみのやまの食卓」と題して
干し野菜や塩蔵食材をフレンチのフルコースで表現していただくイベントをしたこともあり、
今回のコンセプトにはとても共感しました。
1日かぎりの特別な料理を作ってくださったのは、
まだ今ほど地方が語られていなかった2003年にあえて地元・弘前市で
イタリアン「オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ」をオープン。
野菜、果物、ハーブはもちろん、卵、チーズ、生ハム、ワインに至るまで、
お店で出す食材のほとんどを自分の手で育んでいる笹森通彰シェフ。
徹底した地産地消を通り越して、もはや「自産自消」です!
そして、スイーツとパンを作ってくださったのは
銀座の名店「エスキス」のシェフパティシエ成田一世氏!
むつ市ご出身だということで、この日のスペシャルコラボとなったのだそうです。
(期間限定で発売される「オランジェット山椒」が大好きで、お土産にいただき感激なのでした!)
まずは、りんごジュースと、当日がお披露目だったという
笹森シェフのりんごワイン(シナノゴールド&ジョナゴールド)を蛇口から注ぎ放題でいただく贅沢。
りんごの風味がしっかりながら、食事とも調和するキリッとした味わいで何杯いただいたか覚えていません(笑)
笹森シェフは2010年から、自らワインも醸造しており、この日提供された
マルヴァジア2016、シャルドネ2016、バルベーラ2015、ネッビオーロ2015も全てシェフの手によるもの。

カラトリーを支えていたのは剪定したブドウの枝。笹森印ワインのコルクもいただいちゃいました。
では、この日のために秋から時間と情熱をかけて食材と向き合い、準備くださった
珠玉のお料理をおすそわけしましょう。
①鯵ヶ沢ジャージーミルクの自家製ブラッティーナ【醗酵、保存】
笹森シェフが、ただでさえ作るの難しいとされるブッラータを
一口サイズで食べられるようにと限界まで小さくしたオリジナルサイズで提供。
②自家製生ハムと自家菜園の干し柿 【醗酵、熟成、保存】
その響きだけでも美味しい、粉末状にしたニンニクを与えた「ガーリックポーク」を熟成させた
自家製生ハム(カポコッロ、プロシェットクルード、モルタデッラ、ソプレッサータ)。
添えられた絶妙な柔らかさの干し柿とのハーモニーがたまりません!
柿はシェフが生まれた年に植えられたものだというストーリーもぐっときます。
③青森産カルナローリと深浦本マグロ冷燻のインサラータ
【船上活〆、超低温熟成、塩漬け、燻製】
イタリアで、お米の王様といわれるカルナローリ米。
まさか日本で栽培されているとは知りませんでした!
しかも減化学肥料、減農薬、自然乾燥、天日干しで美味しさを最優先に考えた
米作りで知られる山田ファームのものだそう。
大間だけじゃない、日本海側のうまい本マグロと。
④青森シャモロックレヴァ―のパスティッチョ【保存】
新鮮な青森シャモロックのレバーにあえて保存技術を施して。
⑤黒にんにくの冷製アーリオ・オーリオ・スパゲッティ【熟成】
これは最も感動した一皿。青森ならではイタリアンの極みではないでしょうか。
熟成することでドライフルーツのような風味を醸す黒にんにくの
フルーティーさとコクは、それだけで味のすべてを語るチカラがあります。
それをまとったスパゲッティは最高!
この季節もいいけれど、真夏向きの味わい!夏バテしなそう。
⑥七戸産健育牛のビステッカ【熟成、保存】
純国産肉ブランドだという「健育牛」の赤肉を3週間熟成させたビステッカに
菊芋のローストとチップを添えて。(葉物は「エコファーム浅野」さんのものだそう)
⑦ジャージーミルクの自家製チーズ、自家菜園のクルミと白神のはちみつ【保存、醗酵、熟成】
このチーズのクオリティにも驚き。
特に手前右の熟成が深いカマンベールタイプはお取り寄せしたいと思ったほど。
でも、やはり大好評で生産が追い付いていないそう。。。
⑧タルト・タタン
ここからは成田シェフのデザート。
その前に、美味しすぎて、気づいたらほとんどなくなっていたカンパーニュ。
この日のために焼かれたという青森の焼き物もステキでした。
どこにタルト・タタンが?と思いますが、
煮りんごやタルト生地などを一緒に口に入れると再構築されて、記憶が呼び起される仕掛け。
⑨栗の薄焼きネッチのタリアテッレ
栗のスープの上に浮かぶ泡は、薫りを閉じ込める役割だそうで、
口に入れると、はちみつの甘さをまとったオレンジの薫りがふわっと!
「青森すごいぞ!」と叫ばずにはいられない口福のひとときでした。
青森の空気と一緒にいただきたくなる、そんな説得力を感じました。
青森の風土、人に感謝です。ごちそうさまでした。