これまでの【碧南の美味しい冬旅】
①「碧南市認定農家協議会講演会にて講演 「魅せる情報発信 買い手に響く売り方とは」
②「にんじん嫌いが克服できる?子供にも大人気!碧南の超アイデアにんじん料理に仰天!」
愛知県碧南市は、名古屋の南東、三河湾や矢作(やはぎ)川に面した港町。
漁業、農業はもちろん、三河みりんや白しょうゆ発祥の地でもあり、まさに「食財」の宝庫です。
2月上旬、私が講演で伺った時期は、「碧南人参」の最盛期でした。
碧南市は歴史あるにんじん産地で、昭和42年から、冬にんじんの指定産地に指定されています。
現在の主力は「へきなん美人」という名前で出荷されているブランドにんじん。
(主に中京、北陸、京阪神へ出荷されているため、関東ではなかなかお目にかかれないのですが。)
特徴は、生食でもおいしい、色・つやが良い、
ニンジン独特の臭みが少ない、甘い、βカロテンが豊富 (詳しくは、JAあいち中央のHPで。)
*「碧南人参」、「へきなん美人」、「へきなんにんじん」???
11月中旬~3月上旬に出荷されるブランドにんじんが「へきなん美人」。
その後、3月中旬頃をメインに出荷されるのが、「へきなんにんじん」(「碧南鮮紅5寸」)。
碧南市のにんじんの総称が「碧南人参」。つまりは「碧南人参」=「へきなん美人」+「へきなんにんじん」
とはいえ、ぱっと見は、一般的なにんじん。
高値で取引されるブランドにんじんたる所以は何なのか?
その理由は畑にありました!
矢作川に面した海抜ゼロメートル地帯は見渡す限り、畑、畑、畑!
大産地ならではの壮観な景色です。
収穫が終わっている畑もありますが、夏場は一面緑色の絨毯のようになるのだそう。
早速、山中会長の畑へ。
美しい!寒さに当たった葉がほんのり紫色がかっていて、まるで紅葉しているよう。
収穫を直前に控えたにんじんたちを前に、伺って納得した
「へきなん美人」が美味しいワケをまとめてみました。
土地に適した品種
「へきなん美人」のブランド名で出荷されているメインの「碧南人参」は、
美味しさと見た目の美しさも兼ね備えるよう育種された品種のにんじん。
そのベースになっているのが、碧南で古くから栽培されてきた「碧南鮮紅5寸」。
「あいちの伝統野菜」にも認定されています。
土地の歴史を語る伝統あるにんじんの血を大切にしつつ、改良を加えているので、
碧南の土地との相性がバツグン。
碧南でこそ本領を発揮できるのです。
矢作川がもたらす砂地と風
すぐ近くを流れる矢作川によってもたらされた沖積土壌。
つまりは、さらさらの砂地畑でにんじんは栽培されています。
お肌つるつるの「へきなん美人」は砂に磨かれてできているんですね。
さらに川がもたらすのは、強い風。
伺った日もゴーゴーなるほどの強風で刺すような寒さでした。
この冷たい風がまた、味のつまった甘みの強いにんじんには、欠かせないものなのです。
地温を確保し、水はけをよりよくする高畝
砂地を盛り上げ、「高畝」にした上でにんじんを育てています。
この手間をかけるのは
・より水はけをよくすることで甘みを凝縮させられる
(濡れた状態と乾いた状態の差が大きいとより甘くなるため、恵みの雨が降った後、すぐに乾くように。)
・高くすることで陽のあたる面積が増え、地温があがり、よく育つようになる
から。
さらに葉をカットして、まんべんなく陽が当たる工夫もしているのだそうです。
競争させて丈夫なにんじんだけを残す
最近では、必要な分だけ種を蒔いて、にんじんを育てる産地が多いのだそうですが、
碧南では、その倍以上の種を蒔き、ニンジン同士を競争させて
丈夫で健康な、選ばれしものだけを残し、育てていると言います。
風の強い畑で、まだか弱い赤ちゃんにんじんが
身を寄せ合って風に吹き飛ばされないようにすることにもつながるのだそう。
これは高値で取引されて当然の手間とコストのかけかただなぁと思いました。
種代は2倍以上かかるわけですし、
途中でエース以外を取り除く、「間引き」という工程が必要になるからです。
栽培面積が広いのにも関わらず、手作業でしかできない、
手間のかかる工程をあえてしていることには驚きました。
地形の恩恵と厳しさ、伝統品種を生かした育種、
途方もない手間を惜しまない栽培方法によって生まれた選ばれしにんじんが「へきなん美人」なんですね。
本来の旬である冬にゆっくり、じっくり育てるので、「完熟」したにんじんである、というのも美味しい理由。
これについては次の記事で。