近年では「うどん県」の名でも知られる香川県。
野菜ジャーナリスト的には、日本一面積の小さな県であるがゆえ、
限られた土地を活かす農業の知恵と技術が高い県として注目しています。
香川県はご縁あって何度も訪れていますが、今年の4月、収穫期を控えたソラマメ畑を訪れ、
生産量では計れない香川県とソラマメの関係の深さを知ることとなりました。
伺ったのは、高松市の山口さんのソラマメ畑。
ちょうど名前のごとく空に向かって実をふくらませている頃でした。
様々な栽培方法がありますが、山口さんは10月、
稲刈りを終えた後の畑に、発芽させたソラマメを定植。
最初の芽を摘み、丈夫な脇芽8本を選んで、V字型に仕立てています。
ちゃんと導いてあげないといけないので、歯の矯正に感覚的には似ていると教えてくださいました。
そこからさらに、実入りよく、まんべんなく太陽があたるように木の高さや、枝の数、ならせる実の数を調整。
天塩にかけて7ヶ月!5月上旬以降やっと収穫の時を迎えます。
春の貴重なたんぱく源で、完熟させれば保存もきくソラマメは、
香川県の農家なら、自分が食べる分は必ず数本植えていたものなのだそう。
それほど香川県民の生活に根ざした豆なんですね。
そして驚いたのが呼び方の違い!
春先の未熟な豆のことを「新豆」、
完熟までおき乾燥させたソラマメのことを、「大豆」と言うのだとか!
(ちなみに一般的な大豆のことは「秋豆」と呼ぶのだそう。)
「新豆」は、6月頃の田植え仕事の精をつけるために、
旬の鰆、卵焼きと共に「押し寿司」にして食べるのが農家の風物詩で、
新しいお嫁さんがいらしたときもお持ちしたのだそう。
言わずと知れた香川県の郷土料理「しょうゆ豆」も
乾燥させたソラマメ(香川的には「大豆」)を甘辛く煮たもの。
自家用で食べる分が多いこともあってか統計上は1位ではありませんが、
もしかしたら、もっともソラマメを愛し、活用している県なのかもしれません。
次回は、山口さんのお母さんに教わった、
本場しょうゆ豆づくりの肝、豆の意外な食べ方をお届けします。
→「ソラマメ県」で教わったソラマメ保存の知恵&旨すぎる「粉ふきインゲン豆」の作り方