2018/ 10/10(水)

「瀬戸ジャイアンツ」誕生秘話

岡山県のハウス栽培ブドウのNO.1ブランド産地・船穂町での取材後、

(詳細はこちら→【朝日新聞「とれたて菜時記」①岡山県・瀬戸ジャイアンツ】

向かったのは岡山市東区瀬戸町の花澤ぶどう研究所」。

そう!「瀬戸ジャイアンツ」が生まれた場所です。

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「瀬戸ジャイアンツ」は神様からのプレゼント

念願叶って、お目にかかれたのは

「瀬戸ジャイアンツ」産みの親である花澤ぶどう研究所の花澤茂さん。

そして、ずっと寄り添っていらっしゃる奥様の睦子さんご夫妻です。

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「瀬戸ジャイアンツ」育種者の花澤茂さん 睦子さん ご夫妻

 

花澤さんは「瀬戸ジャイアンツ」を筆頭に「ハイベリー」、「涼玉(りょうぎょく)」、

「ブラック三尺」、「マスカットデュークアモーレ」、「備前ゴールド」

「秋峰(しゅうほう)」という7品種もを育種・品種登録されたブドウ界のレジェンドです。

 

そこに至るまでには、世界中から470品種ものブドウを集めて調査、

時間を作っては、栽培方法を学ぶために全国を飛び回り、研究を重ねる日々。

しかも、「瀬戸ジャイアンツ」を品種登録する前までは、

高校教員をしながら、プライベートの時間でブドウ研究をしていたというから驚きです。

その没頭ぶりは、睦子さんから「夫はぶどうが恋人」と言われるほど。

 

試験栽培を続けるうち行き着いたのは、日本の気候風土に適した新しいブドウの必要性。

自身で、ブドウを交配して育種を始めます。

試作とも言える実生育成数は、なんと5000本を超えるそうです。

 

その原動力は「消費者の要望に応えられるブドウを作りたい」という想い。

そうすればおのずと農家の暮らしを支えることにもなる。

まさに「食べる人ファースト」を常に胸に刻んで研究を重ねていた花澤さんへの

予期せぬご褒美「神様からのプレゼント」が「瀬戸ジャイアンツ」だったのだそうです。

 

前例のないブドウの試練

ちょっと変わった形、そして皮ごと食べられるという種なしブドウという、

それまでになかった価値を有した「瀬戸ジャイアンツ」の船出は多難だったと言います。

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「こんな形のものブドウじゃない!ってだいぶ悪く言われて取り扱ってもらえなかったみたいで。

言ってくれればいいのに、何も言わない人でしたから」。睦子さんは当時を振り返ります。

 

花澤さんは自ら駅で試食販売をしたり、普及するまでに10年近くを要したそうです。

岡山県のためにと研究開発したブドウが岡山県の主力品種になったのは、だいぶ後になってのことでした。

 

ブドウ研究のために家族で引っ越し

ブドウ栽培にかける花澤さんの並々ならぬ熱意は、これまでも様々な記事で拝見してきたのですが、

直々にお話を伺って初めて知った事実がいくつもありました。

なんと「瀬戸ジャイアンツ」の由来にもなっている「瀬戸」町は、

ブドウ研究のために移住した土地だったのだそうです!

近くにブドウ産地などがあり、ブドウの情報が得やすいからと。

 

でも、結果として、学校も近くにありとてもいい土地だったそうで安心しました(笑)

伺った日も、小さな駅ながら乗降客がたくさん!

タクシーの運転手さん曰く、大企業や学校が多く(小中、高校は二つ、大学まである。)、

とても暮らしやすい町なのだそう。

 

「母がくれた品種」

途中、睦子さんが涙ぐまれれる場面がありました。

 

同居していた睦子さんのお母さまが、雑草をとってキレイにしようとしたところ、

誤って花澤さんが大切にしていた苗木を抜いてしまったことがあったのだそうです。

3年がかりで育てていた大切な苗。

花澤さんの落胆は相当なもので、睦子さんに怒りをぶつけます。

睦子さんはお母様に告げることなく、自分の中で受け止め、耐えました。

 

奇しくもその数年後に、彗星のごとく花澤さんの畑で実ったのが「瀬戸ジャイアンツ」!

睦子さんは「ブドウが大好きでずっと応援していた母がくれた品種だ」と思ったといいます。

だからいつも仏前で手をあわせるたびに「ばあちゃん、ありがとう」と伝え続けているそうです。

 

もしかしたら、自分に伝えず忍んでいた睦子さんの姿に、お母様も気づいて胸を痛めていたのかもしれません。

(書きながら思い出すだけでもウルウル。。。)

 

家族をあえて巻き込まず、一人でブドウと向き合い続けていた花澤さんでしたが、

やっぱり、見守ってくださる家族あっての研究、ご実績だったのです。

 

「瀬戸ジャイアンツ」の原木

約40年前、「瀬戸ジャイアンツ」を初めて実らせた原木がまだ健在!

細いながらもしっかりと根を張り、まだ実らせ続けているとのこと。

生きるレジェンドにお近づきさせていただきました。

瀬戸ジャンと

株の周りの土がふわふわっ!

愛情を受け、大切に守られている様子が伝わってきて、泣けてきました(涙)

 

お伺いしてみて、長年、「瀬戸ジャイアンツ」に惹かれ続けてきたわけが、わかった気がしました。

ひとつの伝説的ブドウ品種が秘めた物語。伝えていかねばと思いました。

花澤さんと

花澤茂さん、睦子さん、貴重なお時間をありがとうございました。

(つづく)